『経済成長と産業構造』が発刊に

㈱勁草書房から刊行されている「東アジア長期経済統計」シリーズの新刊として、このほど『経済成長と産業構造』が発刊になりました。
私は「東アジア長期経済統計」シリーズの複数の既刊書の監修を務めており、同書の監修も担当させていただきました。
東アジアの産業構造は半世紀にわたる工業化の過程で激しい変化を遂げ、工業化の進展は農業構造に変容を迫り、都市化を通じて社会状況を変貌させました。そうした東アジアの発展の軌跡を追ったのが「東アジア長期経済統計」シリーズであり、本書は成長と構造の観点からシリーズ全体を概観した完結編と言えます。
関心のある方は、下記の勁草書房サイトよりお求めください。

〈発行元〉
勁草書房サイト

〈関連記事〉
数字が語る中国の危うさ
『東アジア長期経済統計』全15巻完結

第18回樫山純三賞について

本年11月8日(水)、ホテルニューオータニにおいて「第18回樫山純三賞」表彰式が開催されました。
同賞は公益財団法人樫山奨学財団が例年授与しているもので、同財団設立者である樫山純三氏(オンワード樫山創業者)の国際社会の情勢を的確に捉え、それらに対処できうる人材を一人でも多く育成すべきとの意志を受け継ぐために設けられ、国際的視野に立った社会有益な図書を表彰しています。
今回は学術書賞は東京外国語大学講師の金悠進氏による『ポピュラー音楽と現代政治-インドネシア自立と依存の文化実践』(京都大学学術出版会刊)、一般書賞はジェトロ・アジア経済研究所海外研究員の猪俣哲史氏による『グローバル・バリューチェーンの地政学』(日本経済新聞出版刊)が受賞されました。
受賞者のお二方、誠におめでとうございます。
私は同賞の選考委員を務めており、代表して審査評を書かせていただきましたので、以下に掲載させていただきます。

〈審査評〉

拓殖大学「震災復興(東京ルネサンス)百年の大計を考えるシンポジウム」のご案内

拓殖大学では9月30日(土)、第3代学長・後藤新平氏の偉業を振り返る「開発と復興の軌跡 後藤新平プロジェクト」の一環として表題のシンポジウムを開催します。
当日は私も報告者・パネリストとして登壇いたします。
受講料は無料ですので、関心をお持ちの方はぜひご参加ください(Zoomによるオンライン配信もあり)。

◆開催要項
〈日 時〉
2023年9月30日(土) 13:00~16:30
〈場 所〉
拓殖大学文京キャンパス(東京都文京区小日向3-4-14)
E館1階 後藤新平・新渡戸稲造記念講堂
※地下鉄丸ノ内線「茗荷谷駅」下車、徒歩3分
〈定 員〉
200名
〈受講料〉
無料

◆参加お申し込み
申し込みフォームからお申し込みください。

◆お問い合わせ
拓殖アーカイブ事業室(文京キャンパス)
TEL.03-3947-7140

◆拓殖大学webサイト
シンポジウム告知ページ

《参考:後藤新平と拓殖大学
拓大人物図鑑

杉森久英著『大風呂敷 後藤新平の生涯』(上・下)

定価:2640円(税込)
定価:2640円(税込)

杉森久英氏の著書『大風呂敷 後藤新平の生涯』上・下巻が、このほど毎日出版販売から刊行されました。
ご存じのように台湾総督府民政長官、満鉄総裁、内務大臣、外務大臣、東京市長等々の要職を歴任し、巨大なスケールの都市計画を推進した後藤新平の生涯を描いた傑作です。
ご存じの通り、私もかねてより後藤新平を敬愛し、自著『後藤新平の台湾 人類もまた生物の一つなり』を上梓させていただいていることからお声がけをいただき、同書下巻のあとがきを執筆させていただきました。よろしければ下記よりごらんください。

下巻あとがき

『大風呂敷 後藤新平の生涯』上巻
『大風呂敷 後藤新平の生涯』下巻

2023年度「後藤新平の会」シンポジウム
『「衛生の道」からみた関東大震災』ご案内

「後藤新平の会」は、後藤新平(1857-1929)の仕事に関心をもつ人々が出会える「場」として2005年7月に創立されました。
同会では後藤新平のように文明のあり方そのものを思索し、それを新しく方向づける業績を挙げた方を顕彰する「後藤新平賞」授賞式と定例のシンポジウムを毎年実施しており、今年は関東大震災100周年ということで『「衛生の道」からみた関東大震災』と題したシンポジウムが開催されます。
私も同シンポジウムにパネリストとして参加しますので、よろしければ会場へ足をお運びください。

◆日時
7月8日(土)
第Ⅰ部 「後藤新平賞」授賞式 10:30開場
第Ⅱ部 シンポジウム 13:30開会

会場
日本プレスセンターホール(定員先着200名)

入場料
一般3,000円 学生1,500円(授賞式は無料)

シンポジウムチラシはこちらから

「第19回日台文化交流青少年スカラシップ」が開催されました

日本と台湾の青少年による文化交流を目指す「第19回日台文化交流青少年スカラシップ」(主催:産経新聞社)が今年も開催されました。
作文とスピーチ(中国語・台湾語)の2部門で286点の応募があり、作文部門の大賞には黒木大誠さん(東京大学教育学部附属中等教育学校2年)の「台湾から考える私達の未来」が、スピーチ部門の大賞には溝口璃温さん(横浜中華学院高等部2年)の「客家と私」が選ばれました。
私は審査委員長を務めさせていただいており、今年も日台の次代を担う若人たちの貴重な意見や熱い思いにふれることができました。
以下に入賞者一覧と審査委員長講評を掲載させていただきます。受賞者の皆さま、本当におめでとうございました。

入賞者一覧

審査委員長講評

公開講座「ネクストリーダーズ セミナー」
開催のお知らせ

混迷の度を深める現代において、長期ビジョンをもった企業や組織の将来を担う人材に求められるリベラルアーツを学び、講師・参加者同士で切磋琢磨する場として、松下政経塾・産経新聞社共催の公開講座「ネクストリーダーズ セミナー」が本年4月より開講されます。
その第1回(4/22)の講師を私が務めさせていただくことになりました。「リーダーシップ」をテーマに講演を行います。
各回定員20名で有料の受講となりますが、受講をご希望の方は、よろしければ同セミナーにお申込みください。

◆全体日程:2023年4月~9月 毎月1回(第4土曜日) 各回14時~17時

◆第1回:2023年4月22日(土曜) 14時~17時
〈内容〉
第1部:基調講演「危機の時代のリーダーシップ~後藤新平のこと」
第2部:アクティブラーニング(参加者同士のディスカッション等)
会場:産経新聞社 東京本社 7F会議室(東京都千代田区大手町1-7-29)

◆第2回以降のテーマと講師
第2回:「教養としての哲学」橋爪大三郎氏(東京工業大学名誉教授)
第3回:「企業・組織経営の要諦」田村潤氏(元キリンビール副社長・100年プランニング代表)
第4回:「リーダーと武士道」執行草舟氏(著述家)
第5回:「リーダーとしての金融・経済を読み解き方」馬渕磨理子氏(一般社団法人日本金融経済研究所代表理事)
第6回:「松下幸之助のリーダーシップ」金子一也氏(松下政経塾塾頭)

◆受講料:全6回 198,000円(税込)

◆申込方法
産経iD(産経新聞社ウェブサイト)
※3月30日(木)まで。応募多数の場合は抽選

◆関連記事
産経新聞webサイト記事(2月9日)

「第39回土光杯全日本青年弁論大会」の審査委員長を務めました

1月7日(土)、「第39回土光杯全日本青年弁論大会」(主催:フジサンケイグループ/特別協賛:カートエンターテイメント/協力:岡山商工会議所)が日本プレスセンタービル10階プレスセンターホール(東京都千代田区)にて開催されました。
同大会は行政改革に大きな足跡を残した故・土光敏夫臨時行政調査会長の“行革の実行には若い力が必要”との呼びかけに応じて、フジサンケイグループが1985年に創設。その後、テーマが拡大され、日本の次代を担う若者の主張の場として毎年開催されています。
3年ぶりの対面形式で開かれた今大会のテーマは「激変する世界を生き抜く」。論文選考を勝ち抜いた10名の若き論客が熱弁をふるい、最優秀賞の土光杯は国語教育の重要性を強調した会社員の小西沙紀さんが獲得。また、土光敏夫氏の出身地、岡山県にちなんだ特別賞岡山賞には先人が残した歴史を学び、固有の倫理観を持つことが主権国家として必要だと訴えた清林館高等学校の伊藤渚希さんが輝きました。
さらに「フジテレビ杯」は大阪学院大学の横井健次郎さん、「ニッポン放送杯」は関西外国語大学の蜂谷翔さん、「産経新聞社杯」は自営業のマニング・ダニエル・キエロンさんが受賞されています。
受賞者の皆さん、誠におめでとうございます。
私は今回も審査委員長を務め、講評を寄せさせていただいております。下記よりごらんください。

審査委員長講評

審査委員長講評(全文/月刊「正論」3月号より)

大会報道記事

TIFによる『私の論文作法』が書籍になりました

拓殖大学国際学部に在籍した教員が中心となって2015年7月に立ち上げた「拓殖国際フォーラム」(TIF)をご存じでしょうか。同組織は第三世界が抱える政治・経済・社会・文化・環境などの諸課題の解決に向けて知的社会貢献を行っていくのが活動の主眼であり、現在、私が会長を務めさせていただいております。

コロナ禍のもと通常の活動継続が困難であることから、TIFでは2021年の年末に論文の書き方に関する教訓や秘訣をTIF会員に取りまとめてもらう「私の論文作法」というプロジェクトを立ち上げました。同プロジェクトにはTIF会員から私を含む9名の有志が参加し、およそ半年をかけて完成を見た小論文を順次TIFのホームページで公開。さらにその後も書籍化への作業を続け、本年12月1日(木)に『私の論文作法』(TIF刊)として上梓いたしました。 書籍の発刊をご報告させていただくとともに、同書収録の私自身が記した序文と小論文を以下に掲載いたします。よろしければごらんください。

●はじめに introduction

●「自分史を書くことの意味ー「私の論文作法」に代えて」(渡辺利夫)

【英訳】「自分史を書くことの意味ー「私の論文作法」に代えて」(渡辺利夫)

第17回樫山純三賞 学術書賞の受賞理由について

11月8日(火)、第17回樫山純三賞が発表となりました。
同賞は公益財団法人樫山奨学財団が例年授与しているもので、同財団設立者である樫山純三氏(オンワード樫山創業者)の国際社会の情勢を的確に捉え、それらに対処できうる人材を一人でも多く育成すべきとの意志を受け継ぐために設けられ、国際的視野に立った社会有益な図書を表彰しています。
このたび受賞されたお二方、心よりおめでとうございました。
私も選考委員の一人として同賞に携わっており、今回、学術書賞に輝いた中村友香著『病いの会話 ネパールで糖尿病を共に生きる』(京都大学学術出版会)の受賞理由について一文をしたためましたので、以下に掲載させていただきます。

〈受賞理由〉
人は生まれ老い病み死んでいく。当たり前の話だが、個々の人間にとっては病むことは死が迫っていることの予兆であり、人を不安や恐怖、苦悩や絶望に追いやる。病は医師が取り組むものであり、病を癒すことが彼らの仕事である。糖尿病という慢性疾患についていえば、医師が患者を診断し、こういう薬を服用し、体調をこのように管理すべきことを説き、その指示にしたがって日常を送るというのが普通であろう。医師の指示を受け入れない者は理解能力や責任感、忍耐力のない人間とされて医療の枠の枠組みの外へ押し出されてしまう。

しかし、ネパールのいくつかの調査時点で著者が観察したものは、病の苦しみを医師に託してそのいいなりになったり、あるいは病の不安から逃れるために、これを誤魔化したり意図的に無視するというのではない。そうではなくて、〈病の不確かさを生きることを可能にしている方法として、病の会話が作り出す「共に生きる」関係性〉こそが重要性をもつというのである。この関係性は、村人たちの糖尿病についての、断片的でひそやかで、時に脈絡のない会話の中から生まれてくるらしい。会話によって「経験」を共有し、病への不安や苦労を鎮めようとしているのであろう。

共同体の中に近代的な病院などが建設され、そこに新しい診断機器や治療機器が導入されたりすると、さまざまな病気に対応してくれるようになって、それはそれで望ましいことのようにも思われるものの、病院ができたことによって共同体がばらばらになり、経験をもとに共に作り上げてきた関係性が消滅してしまうという他面がある。

本書の中で何度も言及されるのは、〈これから自分はどうなっていくのだろうかという病の不安や、苦しい、怖いという感覚と感情のもたらす闇の中を、患者たちがそれでも(なんとか)先に進んでゆけるのは、非目的的に「共に生きる」ことの持つ一つ一つの効果であったのではないか〉という語りである。医療人類学というフィールド・スタディの分野があることは、話として聞いてはいたが、豊富な参考文献をも含めて、これほどまでに精細で、しかも豊穣な物語を紡ぐことのできる分野だったのかと知らされ、初めは少し戸惑いながら、読み終えて私は賛嘆の声を上げている。

私どもはすでに3年ほどの長きにわたり新型コロナウィルスの感染症に脅かされ、「密」を作り出さないよう人間の関係性を薄める生き方を選択せざるを得なかった。人間の本質はコミュニケーションにある。コミュニケーションとは、他者との交わりを通じて相互に何かを分かち合うことである。人間は単体の人ではない。人と人との関係性の中に人間はある。人間とは「ひと-あい」であり、人付き合い、つまり交際なくして人間は存在しない。福沢諭吉がソサイエティ(society)を人間交際と訳したのはそのゆえであろう。

さまざまな機器や薬剤を整えた総合病院やクリニックが一般的になっている。ネパールでもそうらしいが、これが人間の関係性を希薄なものとする要因の一つになっているようでもある。

過剰医療という言葉がある。平成21年からの4年間にわたり夕張市立診療所に勤務した真摯なる一医師の体験的著作によれば、財政破綻により夕張市の総病床数は171床から19床になったという。この間、住民の高齢化は50%を超えて日本一となったにもかかわらず、市民の死亡率(人口100万人当たり死亡数)には変化がなかったそうだ。

コロナ禍の中で、私どもは死というものの観念をかつてないほどの密度で共有させられた。この死の観念を私どもが生きてきた時代の「医療至上主義」の上に投影してその怪しさを感得し、そうしてみずからの死生観に一つの構えを築きたい。中村友香さんのネパールでの観察記録から私はこのことへの示唆のいくつかを得ることができた。記録文学のジャンルに入れてもいいような秀作だと思う。

渡辺利夫